【愛奈】   「わたし、ちょうど今ぐらいの空の色が好きなの」

誰に聞かせるでもない、確認するような独り言にも
聞こえる声だった。

【愛奈】   「夕陽の朱と、夜の青が混じって紫色になっている空。
        色々混ざり合ってるのに、汚くなくて、お互いの色を
        映えさせて、時には新しい色に染まって――」


【愛奈】   「わたしね、人もそうだといいなぁって思うの。
        お互いを高め合うとか、そういう大層なのじゃなくて
        いい――」


【愛奈】   「お互いの色を認め合って、思わず相手の色をもっと
        欲しい……自分に混ぜたくなるって感じるような――
        そんな関係って素敵だなぁ……ってね」


久坂は手の中でコーヒ牛乳のパックを弄びながら、
なんだか優しい目でそれを眺めていた。

そのまま、しばらくパックを撫で続ける久坂――